愛と死 (03/27)

先日、演奏させていただいた、グラナドスの「愛と死」について、少し書きたいと思います。

グラナドス作曲『ゴイェスカス』の第5曲「愛と死」は、第1曲から第4曲の主題を次々に回想していき、走馬燈のような印象を与える曲です。

ゴヤの同名の作品に、決闘に敗れた瀕死の男性を、女性が抱きかかえているシーンを描いた版画があり、その作品に影響を受けたと考えられます。
ドラマティックに二人の愛が歌われた後、最後に男性の死が描かれ、そして弔いの鐘が響き渡ります。


meg masque01リヨン国立高等音楽院での最後の演奏会

 

この曲はリヨン国立高等音楽院の入試で初めて弾いて以来、いろんなところで演奏していますが、
弾くたびにたくさんのことを考えさせられます。
技術的にも難しいですが、何より音楽的表現がとても難しい作品です。

グラナドス自身の手によってオペラに編曲されていますが、編曲前からストーリーが目に見えるようなドラマティックな音楽に、
心を鷲掴みにされ、グラナドスを研究するきっかけになった作品でした。

 

実は、この『ゴイェスカス』を作曲した後にもドラマがありました。

作曲者自身の手でオペラに改作され、アメリカで初演されましたが、帰路の船でドイツ軍による無差別攻撃に遭い、グラナドス夫妻はその犠牲となったのです。
このとき、グラナドスは一命を取り留めましたが、波間に沈もうとする妻の姿を見て海中に身を投じ、二人はもつれ合うように暗い波間に消えたと言われています。

このエピソードが、「愛と死」と交錯するような気がしてならないです。
グラナドスの『ゴイェスカス』。今後も大切なレパートリーとして、演奏し続けたいと思います。